今回ご紹介するのは、行動経済学でノーベル賞を受賞したダニエル・カーニマンの著書『ファスト&スロー』です。上下巻の大ボリュームですが、まずは上巻だけでも十分に読み応えがあり、人間の思考パターンを深く理解するうえで大きなヒントを与えてくれます。
保健師が読むメリットは
-援助対象者の“思考のクセ”を理解する手がかりになります。

今回ご紹介するのは、行動経済学でノーベル賞を受賞したダニエル・カーニマンの著書『ファスト&スロー』です。上下巻の大ボリュームですが、まずは上巻だけでも十分に読み応えがあり、人間の思考パターンを深く理解するうえで大きなヒントを与えてくれます。
発売日:2014年06月
著者/編集:ダニエル・カーネマン, 村井章子
書名:ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?
出版社:早川書房
本書のポイント:システム1とシステム2
『ファスト&スロー』の中心的なテーマは、人間の思考を2つのシステムに分けて考えるということです。
システム1(早い思考): 直感や連想によって瞬時に判断する。 たとえば犬や猫を見て即座に「かわいい!」と感じるのは、このシステム1による反応です。
システム2(遅い思考): 論理的・分析的に物事を検討する。 直感的な判断に対して「本当に正しいか?」と一呼吸おいて考え直すのがシステム2の役割です。
● システム1に支配されやすい状況
私たちは、ニュースやSNSを見ているとき、報道される内容に瞬時に反応しがちです。たとえば、ある人に関して否定的な報道を目にすると、システム2で検証する前に「この人は悪い人だ」と決めつけてしまうことがあります。
● システム2の本来の役割
本来なら、システム1が下した判断に対して、システム2が「ちょっと待てよ」と落ち着いて考える時間を持つことで、誤解や早とちりを防ぐことができます。しかし、私たちが忙しかったり余裕のないときは、システム2がうまく機能せず、直感的な判断に追随しがちになるのです。
AIの進歩とシステム1・システム2
最近話題の生成系AIにも、システム1・システム2のアプローチがあるとされています。連想をベースにした高速な回答を得意とする一方で、徐々に論理思考を取り入れようとする技術も出てきました。
今後、AIの研究が進むことで、人間の脳や思考特性の解明にも寄与するかもしれません。
保健師が得られるメリット
● 思考のクセを理解し、援助対象者を支援する
保健師にとっては、援助対象者の“思考のクセ”を理解する手がかりになります。たとえば「この方は、すぐに自己否定的な結論に飛びつく。システム1が働いているのかもしれない」と考えれば、声かけの仕方や支援のアプローチを工夫できます。
また、声掛けの仕方どう相手のシステム1に反応するかを意識することで、適切な言葉がけをできる可能性が増えます。
● 精神医学との関連性
カーニマンの理論は、今後精神医学やメンタルヘルス分野にも応用の可能性があります。保健師が先にこの本のエッセンスを知っておくことで、実践の場面で「早い思考」「遅い思考」の視点を活用しやすくなるでしょう。
● 自分自身を客観視できる
また、この理論を学ぶことは、保健師自身の思考や判断を見直すきっかけにもなります。忙しいときほどシステム1に頼りがちであるため、「今、私は直感で走っていないか?」と立ち止まることで、より適切な支援ができるかもしれません。
まとめ:まずは上巻からでも読んでみよう
『ファスト&スロー』は上下巻のボリュームがあるが、まずは上巻だけでも十分に価値がある。
人間の思考を「システム1(早い思考)」と「システム2(遅い思考)」に分ける考え方は、私たちの日常や仕事に幅広く応用できる。
保健師として援助対象者を支援するときも、相手の思考パターンや自身の思考のクセを把握することで、より適切な関わり方が見つかるはず。
「思考には2種類ある」という視点を持つだけでも、判断ミスを防いだり、自分や相手を客観的に見るヒントを得られます。興味を持った方は、ぜひ『ファスト&スロー』を手に取ってみてくださいね。

(ネコケン)
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