保健師が読むメリットは
-答えのない相談にであった時の考え方を学べます。
- ネガティブ・ケイパビリティ――「答えが出ない」相談にどう向き合う?
- 1. 今回ご紹介する本
- 2. 保健師も“答えの出なさ”に苦しみがち
- 3. どうして“曖昧さ”を抱える必要があるのか
- 4. 読んでみると「自分の面接のあり方」が変わるかも
- 5. おわりに
ネガティブ・ケイパビリティ――「答えが出ない」相談にどう向き合う?
「せっかく相談を受けたからには、答えを出してあげたい」――保健師として働いていると、そんな思いに駆られることはありませんか? ところが、相手の問題があまりに複雑だったり、そもそも“答えのない状態”が長引いてしまうと、援助者もストレスを感じてしまうのが現実。
今回は、そんな状況を見つめ直す鍵として「ネガティブ・ケイパビリティ」を扱った一冊をご紹介します。
1. 今回ご紹介する本
書名:ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力
著者:帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)
出版社:朝日選書
著者は精神科医であり、小説家としても活動している方です。医師としての豊富な臨床経験と、文学的な感性の両方を活かし、“答えのない問題”と向き合うときの心構えをわかりやすく解説してくれます。
1-1. ネガティブ・ケイパビリティって?
「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、不確実な状況や答えのない問題に直面したとき、「すぐに結論を出そうとせず“その曖昧さを受け入れられる力”」のことを指します。
19世紀のイギリス詩人ジョン・キーツが初めて使った言葉で、後に精神科医ビオンらが精神分析の世界に広めた概念です。
世の中には“ポジティブ・ケイパビリティ”と呼ばれる、物事をテキパキ処理したり要領よくこなす力も重要視されますが、一方で「結論を保留する」ネガティブ・ケイパビリティこそが見落とされがちな大切な能力だと著者は強調します。
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2. 保健師も“答えの出なさ”に苦しみがち
保健師として日々働いていると、「どうしてこんなに難しい相談ばかり……?」と思う場面は少なくありませんよね。
高齢者の終末期ケア(包括の保健師は多いかな)、精神疾患の長年の苦しみ、あるいは依存症で苦しむ人や、援助対象者を抱える家族等と簡単には解決しない問題と同じ空間を共有する場面が多いのではないでしょうか。
2-1.「新人保健師が陥る焦り」
新人保健師の場合、相手の話にすべて答えられないことに強い不安を抱きやすいもの。
「こんなに相談してもらってるのに、何も解決策を提示できない……」という焦りが募ってしまいます。
でも実は、そこにこそネガティブ・ケイパビリティが必要なのだと、筆者の帚木蓬生さんは教えてくれるのです。
確かに助言や解決策は大事
でも、答えが出ない状況そのものを一緒に受け止める――そんな時間も援助職には求められます。
「もう少し様子を見よう」「その悲しみを共有しよう」
こういった姿勢が重要なのに、新人はすぐ“結論”を出さなきゃと焦えてしまいがちなんですね。

3. どうして“曖昧さ”を抱える必要があるのか
3-1. 思考を深め、新たな視点を得るため
本書のなかで語られるポイントのひとつは、曖昧な状態に耐えることで、思考がさらに深まるという考え方です。問題解決を急ぐあまり、すぐに「○○しましょう!」と安易な指示をしてしまうと、対象者の本当の課題にたどり着けないまま終わってしまうリスクがあります。
保健師の仕事でも、たとえば「家族会に参加しましょう」とシンプルな提案をすること自体は悪くないし効果的ですよね。参加する家族にとっては、実際に自分の家庭の背景には何があるのか? なぜそこまで抵抗を感じているのか? もっと根深い要因を見逃していないか? あるいは、敢えて見ないようしていた事があるのか。
そういった部分に焦点を当てるには、家族会に参加することで、他の家族の方の様子を聞いて、自分と同じように苦しんでいて、前に進んでいこうと思えるようになる。
すぐには答えがでなくても、時間と曖昧さを許容することで見えてくるものもあるんですよね。
3-2. 相談者の“ストレス放出の場”になりすぎないように
曖昧さを抱えることと、ただただ愚痴の捌け口になるのとは別問題。本来は“まとまらない問題”を一緒に見つめるのがネガティブ・ケイパビリティの意味合いですが、カタルシス頼みの無限ループにはまると相談者が話し続けてしまうだけで前進がないケースも。
その境界を見極めるのが援助職の腕の見せどころと言えます。“結論を焦らず、でも漫然と時間を費やすわけでもなく、静かに相手と一緒に考え続ける”――それを実践するのは決して簡単ではありませんが、そこでこそ保健師の本領が発揮されるのではないでしょうか。
4. 読んでみると「自分の面接のあり方」が変わるかも
この本は、終末期医療などの事例も引用されていて、医療や福祉の現場で働く人にとってとても示唆的です。もちろん「精読しなくてはならない!」というわけではありませんが、ちょっとした合間に読んでみるだけでも、自分がどんな時に“安易な解決策”に逃げているのかに気づかされるかもしれません。
4-1. 自分の人生にも活かせる“考える力”
実は、「問題がすぐに解決しない」のはプライベートでもよくあることですよね。仕事上だけでなく、家族や友人と衝突したときも、「すぐ答えを出そうとして失敗する」という経験はありませんか? そういうときにこそ、ネガティブ・ケイパビリティの概念を思い出し、「もう少し曖昧さを抱えたまま考え続けよう」と思えれば、意外な落としどころが見つかるかもしれません。
5. おわりに
答えの出ない事態に耐える力――ネガティブ・ケイパビリティ。保健師として働くと、誰しも「これ、いったいどうすれば……」と途方に暮れる場面を経験するはずです。特に新人保健師は「早く結果を出さなきゃ」「具体的な提案をしなきゃ」と焦るあまり、本当に必要なプロセスを飛ばしてしまうこともあるでしょう。
でも、この本を読むと「結論を急がないこと」にも大きな意味があると気づきます。たとえ“答えが見えない”問題であっても、そこに一緒にいる時間を作り、その曖昧さを共有する――そこから思わぬ突破口や、相手が自力で築く“次の一歩”が生まれることがあると思います。
もし、日々の面接や支援業務で「どうして答えが出ないんだろう?」と悩んでいるなら、この書籍を手に取ってみてはいかがでしょう? 新人だけでなく、経験豊富な保健師でも、「ああ、そういえば自分もいつの間にか“即効性”ばかり追い求めていたかも」と立ち止まるヒントになるかもしれません。
苦しみや不確実性をただ嫌うのではなく、そこに深く足を踏み入れる勇気をくれる一冊――ぜひ、あなたの現場で役立ててみてください。
(ネコケン)
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その結果、その事務職が有力ポストに就いた時に復讐される場合もあります。主に保健師のいる職場に優秀な事務職がまわってこなかったり、協力しないという形で。
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